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希死念慮、自殺念慮の思考の連鎖

 うつ病が長引いている時に、大きなショックがあって焦燥感が強まると、自殺を決行する患者がある。たとえば、長く休職している人が、会社から、「あと1カ月で、出社しないと解雇する」と電話を受けた日に自殺する。こういうケースを見ると、一般的に、次の機能連合がある。こういう一般例を参考にして、そのクライアントの場合は、どうであるかを分析する。  また、抑うつ気分があると、容易に、希死念慮、自殺念慮が起きる。 次の機能連合がある。  抑うつ気分と自殺念慮が結合しており、一度、これが結合されたうつ病患者は、寛解になっても、再び抑うつ気分が現れると、希死念慮、自殺念慮が起きる。抑うつ気分と、通常の気分悪化とは、似たように感じられるので、少しのストレスによって、感情的になり、それが抑うつ気分と似ているので、希死念慮、自殺念慮との連合が起こり、その衝動を止める機能が不全のために、自殺を決行するということも起きるおそれがある。  何度も「死にたい」と考えた人は、特にストレスがない時でも、「死にたい」という思いが出ることがある。その回路が過敏になっているためである。そういう場合には、嫌がらずに、効果ある行動に意識を向けるのがよい。

「死にたい思い」はくりかえし出てくる

 =<自殺防止対策>に考慮してほしいこと

 以前に、気分が悪くて、治療 しても、治らず、絶望するところまで考えて、「死にたい」と何度か、考えた人は、「気 分の悪化」→「希死念慮」(死にたいという思い)が学習されていて、少々の論理的な説得では、この「希死念慮」」の生じることを消去することは難しいようである。
希死念慮→自殺念慮
 「自殺しないで下さい」という説得をしても、ある時、「気分が非常にすぐれない」朝には 、自動的に(学習の結果)、希死念慮が再び生じるようだ。希死念慮がある人に、何かの出来事が起ると感情を深めて、実際に死ぬことを考える(自殺念慮)。
 気分の悪さ、感覚〜思考〜感情〜身体症状/精神症状〜のどれから でも、希死念慮に結合するようになる。だから、うつ病がひどくなっている人は、朝、自 殺する思いがなくても、昼に、ちょっとした感情的な出来事(たとえば、その日も、また、いじめられた)が起きたり、むつかしい状況が起きた時(たとえば、事故、病気になった)に、死にたくなってしまい、実際に死ぬ方法を考えて(自殺念慮)、実行することが起きる。

希死念慮は簡単には解消しない・継続的な支援
 うつ病が完治せず、ながびいている人には、自殺のリスクが高い。人生は、長い。うつ病の患者にも、さらに新しい出来事が起きる。ちょっとしたこと で、情動をふかめて、希死念慮、自殺念慮が出てくることがある。だから、うつ病は、長引かせず、完治に向けての対策をとるべきである。
 自殺を防止するには、一度だけの説得で終わりにせず、中途半端な治療のままにせず、実際に自殺を決行しないように、家族も組織も、初期段階での、継続的な支援が必要である。
 励ましても、説得しても、やがて、また、死にたくなるのは、脳内の変調が治っていないからだろう。うつ病になると、セロトニン神経、前頭前野、海馬、前部帯状回、体内時計(概日リズム)、HPA系の負のフィードバック不全などかなり広範な脳部位に変調が起きている。患者さんによって、効き目に違いがあるので、薬物療法、心理療法などを受けて治す体制をととのえていかねばならない。
  • (図)自殺念慮